これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





「うちは昔からこうなの。セレナも慣れたもんよね」



だから他人が口出しするな───と、そう言いたげな目。


いやいや、違うだろ。
そういう問題じゃない。

無関心すぎるんだ、なにもかも。



「セレナが学校でずっといじめられていたこと、知ってますか?」



もしかするとそれすら知らないんじゃないかと、俺は思ってしまった。



「……え?」


「っ、やめてなつくん…!!」



呆気にとられる母親と、絶望を感じたような表情で声を張り上げた娘。

それでも俺は怯むことなく、つづけた。



「転校してからだんだんクラスに馴染めなくなって、悪口や陰口、嫌がらせ、そーいうのを中学になってまで受けてたこと。知っていますか」


「なつくん…っ、おねがい……やめて…」



セレナ、ちがう。

俺は、お前が“惨め”だと思っている過去を話したいんじゃない。


お前がそのときどんなに強く生きていたかを知って欲しいんだ、このお母さんに。



「…そう…だったの…?」



静かに聞いてくる母親に、俺はうなずきを返す。



「それでも、母親にも言わず、学校にも毎日来て。どんなにひどいことをされたって、同じことを誰かにしたことなんか無かった。セレナは…そんな子なんです」