これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





「セレナ。これ、なに?」


「……わん、ぱん…だ」


「そう。…わんぱんだ、俺も好きだよ」


「っ…」



変わってないんだ、俺は。

俺にとってのセレナだって、ちゃんと居るんだよここに。


だから忘れないでほしい。
忘れたなんて、嘘でも言わないでほしい。


前髪で顔を必死に隠していた女の子がいたことを。

自分に自身がなくて、自分のことが大嫌いだった女の子がいたことを。

それでも毎日学校へ来て、強く強く生きていた女の子がいたことを。


あんなにも笑顔が可愛かった女の子を、“どーだっていい”なんかで片付けてくれるな。



「セレナ、俺は…お前が可哀想な子だったからとか、浮いてる子だったからとか、そんなくだらない理由で声をかけたわけじゃない」



センパイにそう言ってたけど、セレナ。

人間は思ってもいないことを器用に言える生き物じゃないから、口から出る言葉というのは大概が頭で考えていることだ。


だから少なくともセレナはそう思っていたんだろう。


過去の自分に俺が声をかけてくれた理由は、こんなものじゃないかって。