これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





それは、俺がかつてセレナに渡したもの。

俺が持っていたわんぱんだが欲しいと言うから、お互いのものを交換したんだ。



「忘れてないでしょ」


「忘れたの!」


「覚えてんでしょ」


「だから知らないってば…!」


「知らなくない」



強く言っては逃げようとするセレナとは反対に、俺は落ち着いて追いかける。



「うるさいッ!そんなのどーだっていい!!」


「どうだってよくねーよ!!!」


「っ、」



大きな声を出しつつも、俺は怒っているわけでも怒りたいわけでもなく。

逃げようとするセレナは無理やりに掴まないと聞いてくれないと思ったから。



「…どうだっていいことにすんなよ。俺にとってはどうだってよくない。俺たちにとって…大切なものだろ」



そして俺も、制服のポケットから同じものを取り出す。

これはかつてセレナが俺にくれたもの。



「ずっと、毎日、どんなときでも肌身離さず持ち歩いてくれてたの知ってる。だからこんなに汚れてるってことも」



今のセレナにとってはどうでもいい存在かもしれないけど、それでも捨ててはいないことが答えだろう。


俺はもう1度、セレナに微笑みかけた。