これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





クッションを手にしてバシバシと叩いてくる。

俺は抵抗せずに、セレナが責めるままに受け止めた。



「ナツくん以外の男と毎日のように電話してるしっ、デートだってキスだってしてる!!浮気だって平気でしてる!!」


「…知ってるよ」


「だったらどうしてもっと気にしてくれないの!?もっと怒ればいいでしょ…!?」


「…気にしてるし、怒ってる」


「嘘だ…!!みんな本当はあたしのことなんかどーだっていいくせに…!!
あたしだってっ、あたしだってナツくんのことなんかっ、ナツくんのことなんか最初から…っ、」



セレナが暴れたことで、ポトンっと、何かが床に落ちた。

ずっと持っていてくれたのか、それともたまたまベッドに放られていただけか、床に転がったのはマスコットのついたキーホルダー。


ずいぶんと古くなって汚れも目立っている、“わんぱんだ”だった。


セレナは息を飲むように言葉を止めた。



「…とっておいて、くれてたんだ」


「……っ」


「もうとっくに捨てられてると思ってた。
…これ、なんて名前だっけセレナ」


「…そんなの……わすれた」