「大丈夫なの?」
「…え、どうしてナツくん」
「いや、親がいないって言ってたから」
セレナが体調を崩すことは珍しかった。
昔から、どんなに学校でいじめられていたとしても学校だけは毎日登校してきていたから。
そんな今日、熱が出て休んだと知った俺は、学校が終わってセレナが暮らすアパートへ向かった。
「平気だよお。微熱だし、ちょっとダルいくらいだし、いつもこうだし」
「とりあえずいろいろ買ってきたから、何か口にできるならしたほうがいいって」
「ええ、なにそれ~。じゃあ口移しで!」
「…セレナ。ここは誰も見てない」
付き合う前の中学生以来だ、セレナの家に上がったのは。
母子家庭のセレナは母親とふたりのアパート暮らしで、そのことを知っているのは俺だけ。
それは、彼女が自発的に話そうとしないから。
そして何よりもセレナ自身が“隠すこと”として生きているから。
「誰も見てないんだから、取り繕うことなんかしなくていいだろ」
「…はあ。ナツくんほんとつまんなくなったね」



