これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





「お母さん、お父さん。私って病気なの?」


「え…?」



昨日もバイトで怒られた。


何度同じミスするの?
さすがに覚えてよ。

新人バイトの子に追い抜かされてるの知ってる?

これくらい覚えられるのが普通なんだから、何度も言われることは恥ずかしいと思ってね───と。



「普通ができないのは、おかしいの?」



“ふつう”ができない私は、わからない私は、おかしいのだろうか。


その夜、宿題が終わってリビングに向かうと、ちょうど残業帰りのお父さんも揃っていたから。

“おかえり”よりも先に自分の考えを言ってしまったことすら、私は“ふつう”ではないのだろうか。



「あなた、今日はビール無しでいい?あとご飯も少し待ってね」


「ああ。もちろん」



お父さんの返事を聞く前にはコンロの火を止めていたお母さんは、迷子になった子供のように突っ立つ私のもとへ寄ってくる。



「桜乃。普通ってなあに?」


「…みんなができて、当たり前なこと」


「じゃあ…みんなができて当たり前なことって、なあに?」