これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





今日がバイトじゃない日で良かった。

というより、シフトを増やしてもらった直後にコレって…。

なんて散々でツイてないの。



「お母さんごめん。ちょっともうシャワー浴びて寝ちゃいそう…」


「ええ?ご飯は?」


「…いらない」


「っていうのは作る前に言って欲しかったなあお母さん。…どこかで転んじゃった?」


「…ううん…、転んでは、ないよ」



詳しく説明することすら億劫だ。

なんとか階段を降りて、なんとか誤魔化して、なんとかバスルームへ向かう。


明日は休もう、学校。


と、思ったとき。
無意識にもシャワーをキュッと止めた。



『明日の放課後、屋上に持ってきてください。───面白いもの、見せてあげるから』



そう言われたから、でもなくて。

気になるからここでも騙された、とも思いたくなくて。


下駄箱で話したとき、すごく落ち着く香りがして。


その一瞬でもつらいことが緩和されたようにも感じて。


気のせいだよね、と思ってからの確信は。

折り畳み傘を開いたときにも鼻をくすぐったホワイトムスクだった。


そんな帰り道に流した涙は、悲しいだけじゃなかったんだ。