「ほらっ、とりあえず私のチョコペン使っていいから!」
「あ、ありがとう…」
考えない考えないってしてみても、それが逆に考えてしまって逆効果。
それに今日の放課後、ふたりだけで顔を会わせるんだと思うと、もう自分でも分かるくらいに顔が熱を持ってゆく。
泣きたくなるくらいに苦しいのに、心はほわっと温かくて。
はやくはやく放課後になれって願う自分と、まだ、まだ、もうちょっとまだ、と伸ばそうとしている瀬戸際。
この気持ちは勝吾くんのときにも感じたようで、やっぱりちがうから。
《三好くんごめんね…!ちょっと先生に頼まれ事をしちゃって、5分ほど遅れます》
《わかった。場所は東棟1階の多目的室ね。待ってる》
待ってる───という文字を、何度も何度も目でなぞると。
鼻をくすぐるホワイトムスクと、脳内に響く心地のいいアルト。
「ありがとな、一ノ瀬。まさか荷物運びしたい人~って言って本当に挙手してくれる生徒がいるとは思ってなかったわ」
「…私もまさか自分が挙げているとは思っていませんでした」



