これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





思い出すだけで悲しくなったのは。


あのときの勝吾くんと交わせていた情景が思い浮かんだからではなくて。

あのキスを、もっとすごいものを、三好くんも高田さんとしているんだって思ってしまったからだった。



「わ!すごっ、なにこれかわいい!」



そんな翌日の3限と4限は調理実習が行われて。

お菓子づくりで盛り上がる家庭科室は、甘い匂いが充満していた。


女子はキャッキャと声を跳ねさせて、男子は男子でギャハギャハ笑っている。


そんななか、端の机で夢中に作業している私を覗きにきたともちゃんが、瞳をキラキラさせて反応した。



「パンダ!?いや、わんちゃん?器用なんだね桜乃って!」


「ううん、ぜんぜん思ったとおりにならなくて…」


「私なんか普通の型抜きクッキーすら変形しまくってるからね?見ろよやべえだろこれ」


「と、ともちゃん……素」


「あっ、いっけなーい!」



という反応ってことは、ともちゃんは“わんぱんだ”を知らないらしい。

もし知っていたらコレってわんぱんだだよね?と聞かれるくらいには、特徴は掴めていると思う…ので。