そこには“三好 奈都”と表示された画面からの───着信。
「わっ、電話だ…!あっ、出ないとっ、ん”ん”っ」
喉を鳴らせて、腹をくくる。
このまま無視をすることだけはできなくて、したくもなくて。
「もっ、もしもし…」
『……もしもし』
久しぶりに聞いた、声。
日数で数えればまだ数日だけだとしても、ずっとずっと久しいものに聞こえる。
電話のはずなのに、ふわっとホワイトムスクが香ってきたような気さえも。
「もしもしっ」
『…もしもし』
「も、もしもし…!」
『……もし、もし』
会話内容、”もしもし”のみ。
どうしようぜんぜん進まない…、
“もしもし”からの進み方が分からない…!
『…ふっ』
そして最初に降参を表したのは三好くん。
『これは法廷闘争になりそ』
スマホを当てた耳が、あつい。
スマホを持った手も、あつい。
彫刻のような伏し目がちな二重ラインだったり、形の良すぎる見本のような鼻だったり。
唇に伝わった柔らかさと、反対に激しさ、強引にも優しかったぜんぶを思い出す。



