これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





「センパイのバイトってまだファミレスなの?」


「うん、そうだよ。あれ…?その話したっけ…?」


「あー、友達づたいで聞いた」


「そうだったんだ」



駅まで歩く、帰り道。

センパイはまたマスクをして、俺に手を引かれている。


それにしてもまだ続けていたのか。
あんな地獄みたいな場所で。



「すごいな」


「え…?すごい?」


「うん。…すごいよ」



あんなに泣かされたら、俺だったらたぶんソッコーやめてる。

でもそれでも続けなくちゃならない理由があったんだろう。

そのときのセンパイには。



「ふふ、でもみんなに迷惑かけちゃってるけど」


「迷惑?」


「うん。最初はホールをやってたんだけどね、注文すらまともに取れなくて…キッチンに回されちゃったの」



今はこうして笑い話にできているところも、すごい。

俺だったら根に持つし、思い出したくもない黒歴史として一生封印するレベルだ。



「でもそのキッチンですら、何回言わせるんだ!って怒られてばっかりだよ」


「…今も?」


「うん。今も」


「…やめようとは思わないの?ほら、もうゴミクズ野郎のためにしなくて良くなったわけだし」