これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





クレーンがお目当てのマスコットを挟んで浮かせたはいいものの、動いた瞬間にポトンっと落ちた。

分かりやすいほどに肩を落とすうしろ姿。


そしてまた当たり前のように無意識にも財布から取り出すものだから、俺は咄嗟に向かった───が、間に合わず。



「よしっ、今度こそ…!」


「狙いがそもそもよくない」


「わっ!」



ボタンを押そうとしているその手に、背後から俺の手を重ねる。



「み、三好くん!」


「そんなに欲しいの?…わんぱんだ」


「……うん」



耳元で俺が一言一言を発するたびに、ピクッと反応しては全身を硬直させるのが分かる。

この人はすごく、いじめたくなる。



「じゃあ俺も手伝うからこれでラストね」


「あ、ありがとう…」



ぜったい1000円以上は使ってる。

こんなのに1000円使うって、そこまで気に入ったのだろうか。



「押して」


「う、うん」



ガラスに反射して映る、密着した俺たちの姿。

うっすらと見えるセンパイの顔の赤さだけは、はっきりとしていた。