これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





そう言って前髪の隙間から覗いた笑顔は、すごく可愛かった。



『…前髪、上げていいんじゃない?』


『……ううん、やだ。ブスだもん。女の子たちはみんなブスって言うし…こうしてたほうが落ち着くの。なつくんだって、こんな顔見たくないでしょ…?』



たぶんそれは妬みとか、そういう意味で言われているはずで。

けれど何度そう言ったとしても『そんなことない』とネガティブで自信がないセレナは、逆に俺にとっては素敵な女の子に見えた。



『セレナはセレナだから。俺はどんなセレナも好きだ』



小学生ながらに、これが幸せなんじゃないかって俺は思った。

特別なものなんかなくても、お金とかじゃなくても、ふたりで居られれば、それだけでいいって。



『ねえ、なつくん。なつくんのわんぱんだ…あたしのと交換してくれない、かな』


『交換?…いいけど、俺のやつちょっと古いよ。一昨年モデルだし』


『いいの。持ってるだけでなつくんが見守ってくれてるみたいだから…』