これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





わかっていた、都合のいい女だってこと。

言われて初めて気づいた“ふり”をしたのは、それでもやっぱり心のどこかでは彼のことを信じたかったから。



「かさ、傘っ、……ロッカーだ…」



靴を履き替えてしまった下駄箱。

昇降口を出ようとしたところで、バッグの中身を忙しく漁る。


見つからないのは当たり前だ。

折り畳み傘は教室のロッカーのなかに突っ込んでしまっていたことをいま思い出したのだから。



「……みじめすぎる」



戻れる気がしない。

いま戻ると、どうしたって2組の前を通ってしまう。

逆にここで立ち止まったままだとしても、彼らと結局は鉢合わせてしまうかもしれない。


ズキン、ズキン、ズキン。


恋って苦しいね、つらいね、楽しいことばかりじゃないんだね。

と、言い聞かせることで精いっぱいだ。




「───傘、持ってないんですか」




聞いたことのない声に、顔を反射的にも向ける。


まず最初にネクタイの色が目に入った。

この学校は学年ごとにネクタイの色が異なっており、1年生は青、2年生は赤、3年生は緑。