これが恋だなんて、知らなかったんだよ。

奈都side




『ナツくん本当に早退しちゃったのー?』


「…ちょっと具合わるくて」


『ええ、寂しい~。いまお家?』



車の音が聞こえる。

ここで誤魔化すことはかえって良くないと考えて、「病院行った帰り」と、ちがう嘘を言う。


だいたいクラスが離れていたとしても、彼氏である俺が早退したならこの時間に気づくっておかしい。


いつもスマートフォンを手放さず、誰かと常に堂々と連絡を取り合っているのが俺の本当の彼女だった。



『ナツくん、好きだよナツくん。だーいすき』



こんなふうに言ってくるときは、男関係にいざこざがあったとき。



「…なにかあったの」


『えへへ~。また切られちゃった』


「…何歳?」


『ええっとねえ、たしか…24歳!』



そう、セレナの相手は1人じゃない。


だから俺にとってはセレナが谷 勝吾と浮気していようがそうじゃなかろうが、大してそこに関して特別な何かがあるわけではなかった。

この女の場合は、俺ですら顔や名前を把握できない規模でいろんな男と関わりを持っているから。