『ん?』
「……あ…、なんでも、ない、…ごめんね」
『言って』
「ううん、だいじょうぶ」
『いーから』
だって彼は授業があるし、何より優先させなくちゃいけない女の子がいる。
困らせるだけ。
困らせちゃうだけだ。
もしかすると調子に乗るなって言われちゃうかも。
『センパイ』
その声だけで、胸がきゅううっと小さくなった。
息が吸えないくらいの動悸というものは本当に存在するんだ。
いろんな音が小刻みに何度も何度も叩いてくる。
トントントン、ドクドクドク、ズキッ、ズキッ、って。
「───…あい、たい…な」
まるで時間が止まったみたいに、スマホ先の呼吸音が一瞬だけ聞こえなくなった。
無言が数秒間つづいて、はっと意識が戻った私は、すぐに訂正する。
「な、なに言ってるんだろう私…!」
『………』
「“会いたい”じゃなくて、“あ、痛い”って言ったの…!うん、そうっ」
『………』
必死にあれやこれやと言葉を紡ぐ私に対する反応は、これといって無かった。



