先生は僕にスポドリを渡してくれて、「ちょっと待っててね」と優しく言ってから保健室を出ていった。

スポドリを口に含んで身体が生き返っていくのを感じながら、無表情で冷えピタのシートを剥がす奏多を見る。


「あの……奏、多…?」

「なに」

「知ってたの…?」


奏多は僕の額に冷えピタをペタッと貼って、「うん」と言った。


「……マジか」


それじゃあ、僕の今までの苦労は一体…!?

僕は力が抜けて、クニャッと体を折りたたんだ。


「え…いつ?いつから…?」


わ、なんか、恥ずかしい…!

バレてたのに必死に僕って言ったり、取り繕うために言ったあんなことやこんなことも全部、…あああ!!


「……いつからだろうな」


意味深な間を感じて、僕はもう一度奏多を見る。

奏多はベッド横のパイプ椅子に腰掛けて、僕の目をしっかりと見返している。

その目に捉えられると、恥ずかしくて仕方ないはずなのに……目を逸らせなくなる。


…ダメだ

僕はマネージャー

ドキドキしちゃいけない、のに


奏多は、満を辞してそのキレイな唇を動かした。



「いいよ」



……???



「いいよって…?」


本当にわからなくて首を傾げると、奏多がフ、と笑った。


「言っただろ。〝今度会ったら返事する〟って」

「……!」


ハッとした僕は、グググッと顔の表面温度が上がっていくのを感じながら、思わず口を押さえた。


それを嬉しそうに眺める奏多は、やっぱりかっこよくて、かっこよすぎて。


僕は、完全に、キャパシティがオーバーしたのだった。