第3章 注文の少ないレストラン
隣県までゴルフに行った二人は、家に帰る前に晩飯を食うことにした。
どうせなら行ったことが無い店に入ろうと珍しく二人の意見が一致して、住宅街より少しずつ手前の道沿いにあった小さなレストランに入った。
カランコローン·····ドアを引くと懐かしい音が鳴った。二人は顔を見合わせてニコリとした。
店内には他に客は居なかった。晩飯時には少々早い時間帯ゆえ、特に気にもしなかった。
ウエイトレスがお冷やを運んできた。メニューは?と聞くと、テーブル上を指差した。テーブル上には薄い紙切れが置いてあった。
「これがメニューか?」
二人は共に呆れるように呟いた。
紙切れには、カレーライス、チキンライス、ハンバーグセットと書いてあった。
「これだけ?」
レストランにしては余りにも少ないメニューに目が点となった。
「今さら店を出るのもなあ。仕方がない。この中から注文分するか」
二人はハンバーグセットを注文しようとウエイトレスを呼んだ。
「二人ともハンバーグセットを」
「今日はチキンライスしかありませんのでチキンライスを注文して下さい」
ウエイトレスは強い口調で言ってきた。
おいおい、何かおかしくはないか?
レストランなのにチキンライスしか無いなんて、そんな店は聞いたことがないぞ。
男はもう一度聞いてみたが、答えは同じだった。
チキンライスが到着した時に、しつこいようだがまた聞いてみた。
「こんな客が来ない店で何品も仕込む訳が無いじゃないですか」
ウエイトレスは乱暴に言い放った。
二人は店内を見回して、「それもそうだな」と言って食べ終わるとそそくさと出ていった。
第4章 サンタクロースのプレゼント
クリスマスイブの夜、眠りにつけない女の子はサンタクロースと遭遇した。
絵本と同じ格好に女の子は興奮し、サンタクロースに抱きついた。
「良い子にしてたかい?」
「うん、ずーっと良い子だったよ」
サンタクロースは「それじゃあ」と言って背中に抱えた袋から一つプレゼントを取り出した。
「さあ、プレゼントだよ」
「やったーー」
女の子は大喜びした。
「開けていい?」
「開けてごらん」
女の子は包装紙を引きちぎると箱の蓋を開けた。
「チッ、何これ? ダセェなあ!」
そう言って、プレゼントをサンタクロースに投げつけた。
それから10年が経過した頃、王家より御触れが出た。
「この剣の飾りを持っている人を王子の妻として迎える」
そこには、見覚えのある剣の飾りの絵が描かれていた。女の子はあの時のサンタクロースを町中探し回った。
女の子は、死ぬまで貧乏だった。