「何で、タクヤがこんなところに?」


「蒼先生から連絡貰ったんだ、アンを迎えに来て欲しいって。」


蒼の奴、余計なことを!


普段だったらともかく、こんな時に澤弥を迎えを寄越すなんて…。


澤弥にだけは、もう迷惑かけたくなかったんだから!!



しばらく車を走らせていると、住んでるマンションが近づいてきた。


「車、マンションの前に着けて良い?」


いや、それは…どうなんだろ?状況によると思う。


「タクヤ、お願いがあるんだけど…。

少しだけスピード落として、マンションの周りを1周してくれない?」


私はシートを少し倒し、身を沈めた。


「また、マスコミにでも追われてるの?」


私は、澤弥の質問には答えなかった。



マンションのそばを通りかかった時、窓の外を窺った。


…最悪!何でまだいるのよ!!


カーキー色のコートを着た男の顔が、ライトに照らされてはっきり見えた。


「タクヤ、このまま真っ直ぐ行って。」


「え?1周するんじゃなかった?」


「もういいから、ここから離れたいの。

ドコでもいいから、早く行って!」


私は叫ぶように澤弥に言い放つと、見つからないように祈りながら車の中で震えていた。