20分近く経っただろうか、ケータイが鳴った。


澤弥からだ。


『もう出てきても大丈夫だよ、アン。』


大丈夫って言われて、やっと安心した。



おそるおそる出てくると、ストーカーの姿はなく、少し離れたところで澤弥が待っていた。


「タクヤ、あの…。」


「話は後で、まずはここから離れよう。」



デパートを出ると、澤弥が待たせてたタクシーに乗り込んだ。


澤弥は行き先を告げると、念のためなのか辺りを見回していた。



「タクヤ、どうやって追っ払ったの?」


「店員に、トイレの前に不審者がいるって言っただけだよ。」


「おおっ、タクヤやるじゃん!」


「向こうも馬鹿じゃないだろうし、もう同じ手は使えないからな。」


そう言った澤弥は、深くため息をついた。



そして、それっきり黙り込んでしまった。