あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「やはり問題は岡安さんの働き方改革ですね。今のままでは息子さんとの時間も取れない。慎里君も寂しい想いをしているでしょう。私もあなたがいつ倒れるかと心配だ」

 医師の診断を待つ気持ちで里穂は慎吾を見つめる。

「岡安さんに惚れている男も、あなたを口説けるチャンスがなくて困っているようですし」

 ウインクを寄越されて、里穂はテーブルに突っ伏すのをなんとか堪えた。

「……なんで、どさくさに紛れて口説いてくるの……?」

「『欲しいものは、能力権力魅力なんでも使って手に入れろ』と、父に叩き込まれましたから」

 さらりと言われた。

 この男のバックボーンがわかったような気がする。

 強引だと思うのに、気がつけば心地よい巣を整えられてしまっている。

 ……慎里も好きな相手を手中に収めるとき、虎視眈々と囲いこむような男に育つのだろうか。

 だとしたら、我が子に愛される女性は幸せだと思う。

 慎吾の父親はきっと魅力的な人物だ。
 そして、そんな父親が射止めたであろう慎吾の母親も素敵な人だろう。

 里穂は、慎吾の両親に会いたいと思った。