あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「率直にお伺いします。今後のあなたの展望についてお聞かせください。岡安さんは客室清掃チームのリーダーになりたいと思っていますか」

「……目指しています」

 口に出すのは責任が伴う。
 子供を抱えて役職に就くことは難しいのかもしれない。

「あなたに惚れている男は、家庭に入ってもらいたいと考えているようです」

 メガネの奥の瞳が柔かくなる。
 里穂はう、と詰まった。

 いきなりオフになるとは。
 しかも、さりげなくプロポーズしてきた。

「ここでその話をする……?」

 呻くようにいえば、ジロリとにらみつけられたので首をすくませる。

「岡安さんの働き方は常軌を逸しています。よくもこれまでホテル側が労働基準局に訴えられなかったものだ」 

「お金がいるんです」

「返済しなければならない借金があるのですか」

 本当に卑怯だ。

 言葉は支配人のままのくせに、口調には里穂への気遣いが満ちている。