先週、客室を清掃していると、デスクにこのパーティーの詳細を記載したメモ用紙があった。

 興味を惹かれ、職場であるホテルの撮影スタジオから男子用のブレザー一式を借りた。

「おっかしーなー。エリートサラリーマンのつもりだったのに、女の人にも声をかけられない」

 里穂はシャツを摘んで中身を見てみた。
 谷間も膨らみもなく、へそまで平らで、補正不要。

「このつるぺたな体型だと『女装』したらギャグになっちゃうから、『男に仮装』したんだけど」

 メイクをしてくれたスタッフも、それはノリノリで仮装を手伝ってくれた。

「イケメンサラリーマンと思ってナンパしてきたお姉さんと『引っかかったー!』ウェーイってするつもりだったのに」

 いきなり声をかけられた。

「それはね、お嬢さん。君があまりに上手く化けすぎて、淫行条例に引っかかるかもしれないってみんな遠慮してるからだよ」