あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「大丈夫」

 慌てだした里穂に、慎吾が余裕たっぷりに言う。

 里穂のママバッグから水温七十度の湯が入った水筒と、水が入った水筒。

 そしてベビーフードと粉ミルクのキューブを取り出して見せたので、彼女は拍手してしまった。

 例によって慎里が恐ろしいほどにミルクを飲み干した。
 慎里を遊ばせながら、二人はとりとめもなく話す。
 慎吾が話題巧者なのか、話題が尽きない。
 どれくらい、二人で喋っていたろうか。

 ふあ、と慎里があくびをしたのをきっかけに慎吾が帰るか、と立ち上がった。

 里穂に手を差し伸べてくれる。ありがとう、と彼の手を取った。

 慎吾が肩に慎里を乗せ、片手で支えながら里穂の指に己の指を絡めてくる。 
 ドキン、と胸が高まって彼を見上げると。


「待つけどスキンシップはするから。勿論、下心付き。だけど逃げるなよ?」

 悪い顔をされたので、思いきりつねってやった。

 里穂は慎里を受け取りチャイルドシートに固定するまで、ドキドキが治らなかった。