あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 照れくさそうに教えてくれたことによると、慎吾という子供は機動力があり、かけっこは毎年一番。 
 興味があればダッシュしてしまう性格だったと。
 
 おかげでしばしば交通事故を起こしかけ、母親に悲鳴を上げさせぱなしだったらしい。

「お袋もこういうのあったら、間違いなく俺につけさせてたと思うよ」

「ってことは」

 笑いが込み上げてくる里穂に、慎吾もニヤリと笑う。

「里穂の息子は父親の遺伝子をしっかりもらっちゃったって訳。なー、慎里。そうだろ?」

 慎吾が歩きたがる慎里の腋に手を入れて目の高さに持ち上げてやると、息子が同意とばかりに「あぶぅ」と返事をした。

 口を尖らせて向き合っている二人が大小の違いはあるけれど相似形で、里穂はやたら幸せな気分になった。

 笑みを慎吾に向けた。

「そっか、慎里。お父さんに似ちゃったんなら、しかたないよねー」

 天真爛漫な表情を向けられて眩しそうな顔をした慎吾が里穂に顔を寄せてきた。

 慎里の動きに気を取られていた里穂が接近してきた彼に気づいて、ビクッと固まる。

 彼女に合わせたように慎吾もそのままの姿勢で固まってしまった。

 言い訳するのは違う気がして、二人の間に気まずい空気が流れる。

 里穂をしばらく見つめた後、慎吾が距離を戻したのを寂しいと思ってしまう自分がいる。

「あの、さ」
「うん」

 しどろもどろな会話しか続けられなくなる。

「同居って言っても、緊張しなくていい」

 ぼそっとつぶやかれた言葉に、地面をながめていた目を上げる。

「白状すると、里穂を見つけることが出来れば『即、結婚!』て思ってたから、ベッドもキングサイズだったりするんだけど」

 あからさまな言葉に真っ赤になる。
 慎吾は里穂から目を逸らさない。