あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 あーうー、と慎里が催促してきた。

「里穂、飲み物淹れとくから慎里に食べさせてやって。コーヒーは飲める?」

「……あー、久しぶりかも」

 カフェインが母乳に影響するのかもと控えていたのだ。
 説明すると慎吾は目を丸くした。

「アルコールだけじゃないんだな」

「そうみたい」

「女性は色々なことを我慢して、命を生み出してくれるんだな……頭が下がるよ」

 慎吾は呟くと、本当に頭を下げた。

 なんでも真似したがる月齢なのか、慎里も里穂にひょこんと頭を下げる。

 嬉しくて誇らしいのに、どう反応していいかわからない。

「惚れてる女が自分の子供を産んでくれるってどれだけ嬉しいか、里穂にはわからないだろう」

 顔をあげた慎吾に、幸せそうに言われた。
 わからないし、それに。

『慎吾だって、大好きなあなたの子が胎内に宿って、産んで育ててるのがどれだけ幸せかわからないでしょう』

 言い返したくてたまらないのに、言えない自分がいる。

 うぶー、と慎里が全くその通りといったタイミングで口を挟んできたので、二人は笑ってしまった。

「ドイツパンは好き?」
「……食べたことない」

「新オーナーのクロフォード氏が、彩皇から離れられない理由の一つがこのドイツパンらしい」

 慎吾が紙袋から中身をテーブルに出していく。

 黒っぽいパンや、フランスパンをまん丸くしたようなパンなど。