あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 ……風呂からリビングへと戻ってみればずいぶん、静かだ。

「慎吾? 慎里?」

 探せば、すうすうと深い寝息がする。

 覗き込んで、慌てて息を飲み込む。ソファで恋しい男性と愛しい子供が眠っていた。

 スプーンの大小のような姿。
 慎吾が腕枕して眠っていれば、慎里も真似したのか片手を顔の下に敷いている。
 そっくりすぎて胸が痛いほどだ。

 なおも二人を見入る。

 男の高い体温が気に入っているのか、慎里はぴったりと慎吾に寄り添っている。
 慎吾もまた、冷えないよう慎里の腹に大きな掌を乗せてやっていた。

 大きい方も小さい方も愛おしすぎて、どうしようもない。

 写メを撮りたいと思うけれど、音でどちらかでも目を覚まさせてしまうのは忍びない。

「二人とも眠いよね」

 夜中に熱性痙攣を起こした慎里に慎吾はつきっきりで傍にいてくれたのだ。
 そのあと、里穂たち母子の引っ越しの荷解き。

 彼らの永久保存版の姿は自分の脳内カメラに収めることにして、里穂はそうっと二人から離れた。音を気にしながら、蛇口を捻って水を飲む。

 二人のところに戻りながら、子供のことを気にしないで風呂に初めて入ったと思い至る。

 今だって、寝ている慎里がソファから落ちないか、なんて心配をせずにいる。
 いつも目を離したすきに慎里が何か飲み込まないか危ないことをしないかと、気が気ではない。

 妊娠がわかってから、こんなに心が休まる日を送ったことはなかった。
 なのに、慎吾がいるというだけでこの安心感はなんだろう。自分以外にも、我が子を守ってくれる人がいる。
 これが独りじゃないということなのだろうか。

「ありがとうね」

 ソファの近くの床に座って、二人の顔を見つめている里穂の目から熱いものが溢れた。