あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 二年前の比ではない。

 明らかに当社比数百パーセントくらいパワーアップしている。
 自分の恋愛経験といえば慎吾ただ一人なのに、どうやって立ち向かえというのだろうか。

 しかもだ。
 のろのろと服を脱ぎながら思う。

「私がクラっとしているのわかっててやってるよね……」
 
 絶対に『好き』がバレている。

 少なくとも慎吾を男として意識しているのが丸わかりだ。

 なのに彼はあの手この手で里穂を誘惑しながら、ただ待っている。
 里穂が自ら堕ちてくるのを。

 里穂だって彼の腕に飛び込みたい。
 けれど、心の準備はできていない。

 しかし、『まだ体を重ねるのは出来ない』と考えていたはずなのに。

 一生懸命むくみを取ろうとしたり必死に洗ってしまっている自分に気づいてしまった。

「きょ、今日はそんなことシないからっ! いやっ、明日以降だって……!」

 大声すぎたのだろう。

「里穂? どうかしたか」

 男の声が近くで聞こえて「なんでもないっ」と叫んだ。

 入ってこられたら、自分がどんな行動を取るかわからない。

 抱きついたりしないよう、里穂は慌ててシャワーで泡を流すと浴槽に乱暴に入った。

 さっき、見てしまった裸と以前見つめた裸が重なる。

 服を着ててもどきどきしてしまうのに、何も身につけていない彼に口説かれでもしてしまったら。

 心が体のストッパーにならない日が来るのは確実である。

 これからどうしたいのか。
 慎吾とどうなりたいのか、自分でもよくわからない。
 こんな時に相談できる女友達もいない。

「前途多難……」

 里穂は浴槽の中に口のあたりまで浸かりながら呟いた。