あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 そうこうする間に夜になった。
 慎里のご飯はあるとして、大人の分はどうしようと話し合う。

「護孝の家か、うちの両親に里穂達を見せびらかしに行こうかなって考えてたんだけど」

 慎吾が呟いた途端、里穂が青ざめてしまったのでひとまず却下。

「無難に店屋物にしようか。明日から二人で料理教室だ」

 寿司はまだ慎里が食べられない、ピザは似たような物をデリで食べたと話しあった。
 結果、慎吾は天ぷら定食で里穂は鍋焼きうどんになった。

 里穂がうどんを調理鋏で切って、慎里用の茶碗に入れてやると息子は手づかみで食べ始める。

 慎吾はじっとその様子を見つめていた。

 我が子が野生の動物みたいで少し恥ずかしいが、一歳児なんてこんなものだと割り切る。

 慎吾こそ、自分達二人と暮らすのなら慣れてもらわなければ話にならない。

「ワイルドだなー」

 面白そうに言うので、ひとまずホッとする。

「気に入らないと天井近くまで飛ばしたりするの」

 里穂はちらりと周りを確認する。 

 ここの天井はマンションにしては高いし、壁までも広いから慎里といえどそこまで飛ばせないだろう。

「ん、了解。確か壁のクロスは拭き取り可能だし、床も大丈夫な建材だ。慎里、思い切りやっていいからな」

 言った途端、了解とばかりに慎里が口の中のものをぶーっと吹き出した。

「お前っ、社交辞令だっていうのをわかれよっ」

 慎吾があたふたとウエットティッシュをとり、顔中うどんだらけにした慎里の顔をまず拭いてくれてから床にかがみ込む。