タブレットを取り出した慎吾に、里穂はあっけに取られた。
「里穂、洋服で好きなブランドはあるか?」
慎里の服について特に好きなデザイナーはいないと答えたら、違うよと言われた。意味がわからなくてキョトンとしてしまう。
「考えたら息子の分は買ったけど、彼女の分は買ってなかったな、て思って」
笑いかけられて、慌てた。
「私の分なんか、いいの!」
救急病院の分やハイヤー、そして慎里の物。今日一日でどれだけ慎吾に散財させてしまったのだろう。
ち、ち……と慎吾は一本立てた指を振った。
剽軽な仕草はあの日の『フライマン・シンゴ』みたいだ。先程もしてくれていたことにようやく気づいた。
「そうはいかないんだよ、お嬢さん。この家では最低一週間分のローテーションがないと服務規定違反だから」
買え、買わない。
必要だ、ならば自分で買う。
いや、これは今までの養育費がわりだ。
……押し問答の末、里穂が折れた。
というより。
「なあ、里穂。遮光カーテンはどれが好き?」
タブレットに表示された沢山の柄をじっくり見て、指をさす。
「レースのカーテンは」
これがいいと伝える。
「寝具は。里穂は身長何センチくらい?」
色々聞かれてリサーチされた挙句、慎吾は胡散臭いほどの笑顔を浮かべた。
「よし! 里穂のサイズと好みは完全に把握した。好きな女にプレゼントを買うって行為は、男に産まれた特権だよなー」
止める間も無く慎吾は意気揚々とネットで注文した。
「え!」
やめさせようとしても、背の高い慎吾の方が有利だ。
子供を抱いたままの彼女に、タブレットを天井近くに持ち上げられてしまってはどうすることもできない。



