彼が手提げ袋の中を全て出すと、大きいテーブルに里穂一人では食べ切れない量のデリが並んだ。

 最後に慎吾は蓋をした紙コップを二つ取り出す。

「俺も一緒に食べる。飲み物は里穂の好きな方を飲んでいいぞ」

 にこ、と笑いかけられ、里穂はうなずいた。

 二人だと、たくさんあったデリも全て胃の中に収まった。

「美味しかった!」

 ご馳走様でしたと礼を言えば、慎吾も満足そうだった。

「看護師に美味しい店はどこだろうって聞いた甲斐があったな。出店を促してもいいレベルも二・三あったし」

 店の名前をタブレットにすぐ打ち込んでいる姿にさすがだな、と里穂は思う。

 データの整理が終わった慎吾は、真剣な表情で彼女を見つめた。

「里穂。改めて俺達、付き合わないか」

 まさか、こんなストレートにぶつけられると思っていなかった里穂はドギマギしてしまう。

「でも」

「俺のことはもう嫌いか。慎里の父親ってだけの存在か?」

 問う慎吾の切なそうな表情と声で、今でも自分に焦がれてくれているのがわかった。

 嬉しい。
 なのに舌が凍りついたように動いていない。