あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「わぁ」

 近未来的なキッチンに里穂は思わず声を上げた。
 
 しかしつまみも着火装置も否、どこが加熱場所なのかわからないことに気づく。

「……あの、どうやって使うの?」

 恥ずかしながら質問する。

 就職してからずっと、三食全てホテルの賄いでやってきたので、レンジをチンするかお湯を沸かすくらいしかできない。

「見てろよ? 確かここを押すと、ここが飛び出てくるはず……あれ、出てこない。おかしいな」

 慎吾もあまり使ったことがないらしい。

「家主さんもわからないんだ?」

 里穂が堪えきれずに笑った。

「ちょっと待っててくれ。どこかに仕様書が、……あった」

 焦ったらしい声を出しながら、慎吾は天袋にしまっていたのを見つけたらしく、ひょいと手を伸ばして取り出す。

「ええと。お、すごいな。水道にはビルドイン式の浄水器がついてるって。里穂、慎里のミルクは浄水の方がいいよな?」

 里穂がうなずく。
 慎吾が息子をずっと抱いてくれているのに気づいて、手を伸ばしたら断られた。

「俺と彼とは今、男同士のコミュニケーション中なんだ、黙って見守っててくれ」

 相変わらず、ユーモアに溢れた言葉に、里穂は微笑む。