あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「里穂、大丈夫か?」

 恐怖の表情を浮かべているであろう自分に、慎吾が心配そうに声をかけてくれる。

 言えない。
 彼に軽蔑されてしまうのが怖い。

「里穂、何か心配ごとでもあるのか。なんでもいい、話してくれないか」

 暖かい言葉だったのに、彼女は俯いたまま首を降った。

「……ごめんなさい」

 それだけようやく絞り出した。

「いいよ」

 ぽんと手が頭の上に置かれる。

「話せない事情があるんだな?」

 里穂はうなずいた。

 本当は慎吾にこそ語って、さっさと嫌われなければならないのに。

 だが、慎吾は言う。

「俺達再会したはいいものの、ろくに話し合ってないものな。君が警戒するのももっともだ」

 反射的に里穂は顔をあげた。

「違うの!」

 彼を疑ってなどいない。だけど……。言葉が紡げない代わりに、必死に見る。

 慎吾も彼女をじっと見つめている。
 自分はきっと怯えている顔をしているだろう。やがて彼はニッと微笑んだ。

「いいさ。そのうち吐かせてやる」