あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「結果を見せてやってもいいが、この子が誰の子供かは君が一番わかっている。なぜ、俺に隠そうとする?」

 男の声は怒気を含んでいる。

 なのに慎里は父親と認めているのか、話し声にかえって安心したようで里穂の胸に縋ってくうくうと寝息を立てている。

 里穂は小さな声で白状した。

「……貴方にこの子を奪われると思ったの」

「ああ。この子ごと、なにかに囚われている君を奪ってやりたいよ」

 先ほどよりも、慎吾の瞳が熱を孕んでいる。
 怖いのに、綺麗でずっと見ていたい。

 ――今。彼はなんと言った?

「里穂の気持ちが知りたい。俺に教えてくれないか?」

 聞かれたが、なんと答えればいいのだろう。

 黙ってしまった彼女に何を感じたのかわからないが、慎吾は言葉を続ける。

「保育士も医師も俺の顔を見て、慎里と親子だと一目でわかってくれた」
 
 そうだろう。
 こんなにも似ていて、他人だと言われた方が信じられない。

 里穂だって、緊急の引き受け人を『息子の父親』だと保育園に通達してあったのだから。

 慎吾が突然現れても、誰も不思議に思わない。