あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「無論、『あのときの子じゃない』と言い逃れも可能だそうだ」

 男の静かな声音に、かえってびくついた。

「医師によれば『出産日から受胎日を割り出す方法はあくまで概算』だそうだから、ずれることもあると」

 思わず顔をあげた。
 彼の双眸に湛えられた強い光が、里穂の瞳の中に押し入ってくるようだ。

「慎里という名前は、俺と君の名前から一字ずつとったんじゃないのか」

「……この子の父親からとったの」

 嘘ではない。

「俺とこの子のDNAを調べた」

 里穂の喉がひゅっと鳴る。

「嘘……、そんなに早く……」

 バレたらいずれ親子鑑定を求められるだろうと思っていたが、まさか結果まで出ているとは。

 里穂の浅はかさを裏付けるように慎吾は言った。

「金と権力万歳だ。俺には友人が多いからな」

 里穂はうつむいて、唇を噛み締める。
 彼の有能さと俊敏さをあなどっていた。