あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 煌々と明るく広く、里穂達が住んでいるアパートより立派な普請である。『彩皇』の駐車スペースより、遥かにグレードの高い車が何十台も停まっている。

「とりあえず、続きは家で話そう」

 慎吾は、慎里を抱いたままの里穂を手伝って車から下ろしてくれた。

 運転手が何か白い手提げ袋を慎吾に手渡すと、彼は里穂の荷物を持った方の手で受け取った。

 当然のように、もう片方の手で彼女の背中に手を添えて、エレベーターに向かって歩き出す。

 扉が開いて慎吾は乗り込んだが、自然に彼女の足が止まる。

 いまさらに、ついていってしまっていいのだろうか。

「里穂? おいで」

 促された。
 ……慎里を抱いたままだから、この場から逃げるのは難しい。

 諦めて、男と一緒に乗り込む。

 エレベーターのドアが閉まり、動きだすと慎吾が低い声で話し出した。

「岡安 慎里、七月二十五日生まれ、一歳。受精日は前年の十月三十一日である可能性が極めて高い」

「あ」

 貴方の子供ではない。
 言わなければならないのに、言えない。

 腕の中の愛し児と、目の前の恋しい人はこれほどそっくりだったのかと思うほどに似通っていた。