あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 自分が行けばよかったと後悔に苛まれていたのを、慎吾が不安を鎮めてくれた。

「ありがとう」

 万感の思いで五文字を書けば。

『聞きたいことがある。ホテルの裏口からワンブロック離れた所に車を待たせておく』

 有無を言わさない言葉がすぐに返ってきた。

 彼がなにを聞きたいのか言われる前からわかっている。

 ——慎里を奪われてしまう。正直、逃げ出したい。

 ……しかし。今回のことで、自分では我が子を守ってやれないのがよくわかった。
 
「慎吾なら、慎里を大事にしてくれる」

 息子は裕福な父親の許で、すくすくと育つだろう。


 仮眠室で『熱性痙攣』や『親権』『面会権』などの単語を調べてしまっているうちに長い夜が明けた。