あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 息子を預けている無認可保育園は、軽い症状であれば病中保育もしてくれるが、別料金だ。

「ごめんね、慎里。学費から借りるね」

 ギリギリの生活では、息子用の貯金を取り崩すしかない。

 悩む間もなく、第二報が来た。

『慎里くんが熱性痙攣を起こしてます! 至急、救急病院へ連れていってください!』

 ドクン。
 心臓がいやな音を立てる。

「慎里!」

 そこから先は無意識だった。

 渡されたメモを登録したあと幾度となく見ていた結果、覚えてしまった番号を指が勝手に押していく。
 携帯の画面には『慎吾』の文字が浮かんでいる。
 夜中なのに、彼はわずか五コールで出てくれた。

『里穂か、どうした』

 気遣うような声に彼女は安心して涙ぐみそうになった。

「慎吾……、子供を病院に連れていってほしいの」

『わかった。どこに行けばいい?』

 里穂は保育園の場所を告げた。

『すぐ行く。君は子供のそばにいるんだな?』

 当然の質問だ。

「私は夜勤中なの」

 電話の向こうで、慎吾が息を呑んだ。