……母親学級で出産時の呼吸の仕方。新生児の抱き方、入浴の仕方などを、夫婦で仲睦まじく習っているのを見ると胸に迫るものがある。

 寂しさを感じた分、あらためて赤ん坊に誓う。

「ごめんね、必ず幸せにするからね」

 あの人の分も。

 体が女から母になっていく。
 胸が大きくなり、ちょっぴり嬉しくなった。

「人生初の巨乳を楽しんでます」

 動画を撮影しながら思う。
 慎吾は大きくなった胸も愛でてくれるだろうか。

「だめ、彼のことは考えない!」

 里穂は頭から恋しい人を追い出す。

「慎里。お母さんはあなたのご飯の用意、万全ですよー」

 段々と腹部が大きくなっていく。

「痛っ……うぅー」

 腰痛や、夜中に足を攣って起きてしまうこともある。
 獣のように唸ってしまうのを止められない。

「慎吾がいれば、さすってもらえるのにな……」

 変な体制で固まったまま、慎吾の笑顔やこんな時はオロオロしてくれるのだろうかと考えて、気を紛らわせる。


 皆に心配され怒られながら産み月まで働き、出産予定日の二週間前にようやく産休に入った。