あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 ……自分のためなのだろう。

 無実だったとはいえ、子供の頃から『自分は犯罪者かもしれない』と怯えていた里穂は、自己評価が低い。
 なにかと慎吾との格差にビクついている里穂を怖がらせないようにとの、彼の気遣いなのだ。

 いい加減、卑下するのをやめよう。
 慎吾に愛されているのは自分で、彼を幸せにしてあげられるのも自分なのだ。

 ——それよりは。
 子持ちとはいえ、結婚式を挙げたばかりの新婦として思いを馳せるところは別にある。

「素敵なドレスだったよね……」

 里穂がうっとりとため息をつく。

「自分があんなにセクシーなものを着こなせるとは思わなかった……なに?」

 じいっと自分を見つめている夫に気づいた。

「自分の嫁さんがあんまりいい女なんで惚れ直してた」

 優しい笑みを浮かべた慎吾が近づいてきて、彼女の唇を啄む。

「なあ」

 夫は妻の耳にささやく。

「三人目、できてると思う?」
「……どう、だろうね」

 里穂は頬を染める。
 結婚式の夜、思い出の部屋に二人は泊まり、季穂が生まれてから初めて体を重ねた。

「今度は、いつくらいにわかるかな?」

 慎吾は里穂の耳にかり、と歯を立てる。
 欲まみれの声と与えられた刺激に、甘い波にさらわれそうになる。

「期待しないでね」

 はにかんで予防線を張ってみる。

「しないけど、今日も頑張ろうかな」

 慎吾は微笑みかけてくれたが、彼の双眸に獰猛な光が宿っていた。
 その瞳に、怖いと思うよりときめいてしまう自分がいる。

 ……いいかもしれない。里穂は思う。