あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 仮装もといお色直しは二人の馴れ初めとなった、サラリーマンと火傷男。
 慎吾は体型をキープしていたが、里穂はそうはいかなかった。

「……入らない」

 彩皇が所有していた各衣装はそれぞれのエスタークホテルへと散っている。
 記録を探して、あの時の里穂の衣装を取り寄せたのだが。

 彼女は泣きそうな声を出した。

 ワイシャツの胸のボタンがきついし、ジャケットもだ。おまけに腰回りも、ボトムのジッパーが締めきらない。

「ん? ああ」

 愛おしい人のSOSに慎吾は仔細に検分し、納得した。

「お嬢さん」

 揶揄うような低い、魅惑的な声。

「初めて会った日より、女になったからだよ」

 耳元でささやかれて、え?と里穂は目を挙げた。
 目の前には、二人が会ったその日に彼女をベッドに押し倒した男がいる。
「どこかの誰かさんは、再会して以来相思相愛の恋人にたっぷり愛されて、母としても日々充実してるからね」

 にっこり微笑まれて、原因に思い至った。

「あ……」
「だろ?」

 ウインクされて里穂は納得した。

「ワンサイズ上のにすれば問題ないんだけど……うーん」

 慎吾が困ったような表情をして見せた。

「なに?」

 つられて里穂が不安そうな顔をすると慎吾がにやっと笑った。

「美少年のエルフが、実は男装の麗人てバレちゃうなあって」

 照れた里穂は慎吾をつねるしかなかった。