あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

里穂に呼ぶ親族がいないことへ配慮したのだ。

 それだ!と宴会部が喜色を示した。

 二人の結婚式はホテルが期待していたようなものではなく、食事会のみ。
 参列者も十人くらいと、慎ましいにも程があった。

 何も身内で採算を取りたい訳ではない。
 だが、彩皇の支配人は男性社員も認める、エスタークのCEOと並んで色男である。
 彼を宣伝に使いたいのは宴会部全員の願いなのだ。

「二部形式で、一部はお色直しの格好でホテルを練り歩いて二部で結婚の誓い」

 慎吾のアイディアに皆、首を捻る。
 彼はニッと笑った。
 慎吾の笑みをみて、里穂は久しぶりに『フライマン・シンゴ』に会ったなと思った。

「日付はハロウィン。逃げ出したモンスター・フライマンはサラリーマン・エルフと恋に堕ちるんだ。二人は魔法が解けて、結婚する」

 つまり、コメディタッチなお色直し(仮装)から始まって、荘厳な礼装で終わるのだ。

 宴会部の人間だけではなく、その場にいた人間が全て沸いた。
 二人が出会った年以降も旗艦店ではハロウィン・パーティが行われている。

「参加型のイベントにしちゃおう」

 パーティ会場は旗艦店最大のバンケットルームであり防音もしっかりしてるが、どうしても空気がざわめくのを止められない。

 なので、毎年十月三十一日から十一月一日にはイベントを行う客及び宿泊する客には注意喚起をしている。ちょうどよかった。

「里穂はいやか?」

 だったらやめるよ、という気遣いが溢れている夫の表情に、里穂は決心した。

「私達の結婚式も、お客様が楽しんでいる雰囲気も壊れないなら」

 方針がまとまった。