あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

 とうとう宴会部の部長まで押しかけてきて直訴した結果。
 ようやく慎吾は里穂と自分の顔を映った画像は使用しないこと。
 今回撮影した全ての画像を深沢家に提供することで了承した。

 撮影はもちろん、旗艦ホテルで行われた。

 結婚式場の壮麗な入口の前で優雅にトレーンを引きずり、背中越しに振り向こうとしている花嫁。
 彼女にたくましく手を差し伸べる花婿。
 大階段を一段登った里穂に膝まづく慎吾。
 ウエディングブーケを嬉しそうに持ち、額をコツンと合わせた二人。

「なにかの撮影? ドラマかな」
「でも、女優さんも俳優さんも知らないなー」

 平日ではあるが、エスタークには客が途切れない。そんな中での撮影は人目を引いた。
 通りすがりの客の声が聞こえた慎吾はふとつぶやいた。

「里穂。人前式をやろうか」

 それってなんだっけ?と訊ねてくる彼女に慎吾は説明してやる。

 人前式とは列席者へ結婚の意思を誓いを立てて証人になってもらうスタイルで、宗教色がないのが特色である。

「エスタークにきた客なら、参加したいなら参列してもらおうか」