彼女が身につけているドレスを推薦した、慎吾自身ですら見惚れた。

「……これほどとは思わなかった。まるで中世のお姫様みたいだ」

 掠れた声で評している慎吾の双眸に熱い欲望が点るのを、里穂は嬉しく誇らしく思いながら聞いた。

 レースでできた花をクリスタルビーズを用いて花輪のように仕上げ、霞のようなヴェールをかぶせる。すると、夫が言ったように姫君が絵本の中から飛び出してきたようだ。

「こんなに可愛いお姫様をもらうんだもの、慎吾にも騎士みたいな格好させたいわねー」

 義母が満足そうに言えば。
 二人に試着をさせていた衣装部のスタッフが、ギラギラと目を燃え上がらせた。

「こちらはどうですか!」

 予定外であった、金モールのついた軍服調だの押し付けられての問答が始まる。

「支配人にはこのディープな紫紺がお似合いだと常々……!」

 芸能人の披露宴でもおめにかかれないような、キラキラしい衣装だのを押し付けられて慎吾は断るのだが、スタッフは一歩もひかない。

 着ろ、着ない。
 押し問答の末、スタッフが切り札を持ち出してきた。