ドレスはとてもセクシーなものだ。
 深いVラインの切れ込みが鳩尾近くまで入り、泡だつようなレースが鳩尾から鎖骨まで覆っている。
 背中も同様。そしてあえてのマーメイドライン。

 着てみると、一目瞭然。
 豊満な胸の女性では目のやり場に困ってしまうようなドレスだが、里穂のスレンダーな体型だと高貴な雰囲気を醸し出す。 

「里穂さん、産後間もないのになんて綺麗なラインなの……! それを最大に活かすとは我が子ながら……いや、夫だからかしら。さすがの審美眼ね!」

 義母を唸らせた。

「……これ、私?」

 鏡の中の自分を見て、里穂は呆然とした。

 レースの長袖は中指まで伸びて、クリスタルビーズがキラキラと反射する。

 体になよやかにまとわりつく布は、彼女のしなやかなボデイーラインを一層優美に見せる。前裾はヒールが覗くくらいだが、後ろは少し広がってトレーンとなっている。

 慎吾と出会った日にショートだった髪はすっかり伸びて背中にこぼれ落ち、清楚な白のドレスに凛烈としたアクセントとなっている。

 一日中、掃除をしていた娘が一夜にしてプリンセスになった気持ちと、里穂が感じている気持ちは同じかもしれない。
 神々しいほどに美しい自分が、信じられない。

「おひめしゃまー!」

 叫んだ慎里の言葉に代表される。