「親父が慎里の名前を聞いて喜んでた」
「そうなんだ、よかった。あのね」

 里穂は慎吾からタブレットとペンを借りて、自分の親の名前を書き込んだ。

「里穂の親父さんが『穂高』さん。お義母さんが……あれ?」

 慎吾も気がついた。

「そうなの」

 里穂の母親の名前は『季里(きり)』、母親二人に同じ漢字が使われていた。

「決めた」

 慎吾は言った。

「『季穂(きほ)』だ」
「いいね」

 里穂も賛成した。
 二人の子供は偶然ではあるが、両方の家族から名前をもらったことになる。

「お義母さんに喜んでもらえそう」
「ああ。里穂の天国のご両親にもな」

「赤ちゃん、あなたが女の子なら『季穂』ちゃんだって」

 里穂は腹を撫でながら話す。

「お父さんが名づけてくれたよ、可愛い名前つけてもらえてよかったね」

 なおも里穂が腹に話しかければ胎児がうにゅん、と動いて返事をしてくれた。

「あれ、胎動?」

 手に伝わってきた動きに、里穂は首をかしげた。

 随分早い。
 とはいえ、早い人ならば感じ始めると言われるあたりではある。けれど、慎里の時はもう少し後だったように思う。