翌朝、里穂ははっと飛び起きた。途端、鈍痛に顔をしかめる。

 キョロキョロと探した時計を見れば、午前四時。そろそろ始発が動く。
 今日の彼女のシフトは早番で、六時に深夜勤組と交代するのだ。

 隣を見れば、慎吾はぐっすりと眠っている。

 すでにこの男が愛おしくて、恋しい。猛烈な筋肉痛や裂かれたような痛みさえ、初めてを彼に捧げられた証だと思えば誇らしい。

 溢れる気持ちのまま彼の瞼に口づけた。けれど慎吾は目覚めない。
 話してから出勤したかったが、無理に起こすのも気が引けた。

 どうせ、すぐにまた会えるのだ。
 着替えてから、里穂はメモパッドに自分の連絡先を書いた。

「慎吾へ。また会おうね。里穂。×××ー××××ー××××」

 アドレスは彼からSNSが送られてきた時に教えればいい。

 けれど、慎吾からは連絡が来なかった。 
 毎日、暇を見て確認するが着信はない。
 真夜中に飛び起きて確認したら迷惑メールだった。

 一か月は、忙しくて連絡出来ないのだと考えた。

「海外出張行っちゃってるんだ。おにーさん、違った慎吾は出来るリーマンぽかったし」

 携帯を落としたのかもしれないし、怪我や病気で入院してるのかもしれないとさえ考えた。

 ……二ヶ月目は自分でモテリーマンだと言っていた慎吾のことだ、ありふれた一夜に過ぎなかったのかもしれないと思うようになった。

 未練がましい自分を忘れようと携帯番号を変えようとも思った。
 けれど、ようやく携帯の料金を払えるようになったばかりで機種変更する余裕はない。

 そうこうするうち、里穂は生理がこないことに気がついた。
 もしや……震える思いでドラッグストアに行き、妊娠検査薬を購入した。
 トイレで試してしばし待つ。
 陽性だった。