あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜

「もし、俺と再会するまえに君と慎里がそんな目に遭っていたら……!」

 慎吾は妻を抱きしめた。
 夫の震えを感じ、里穂は彼を抱きしめ返す。

「大丈夫だったよ」

「里穂はいつも動画の中で微笑んでいたから、知らなかったんだ」

 聞こえないほど小さく呟かれた言葉に、里穂は返す言葉がなかった。

 再会するまでの時間は二人に、とりわけ慎吾の傷となって遺るのかもしれない。
 自分に何かあれば彼は一生後悔の海に沈んでしまうのだろう。

「大変な時は慎吾に頼っていい?」

 彼女ができることは、辛いことを偽らないこと。
 彼に支えてもらっているからこそ、自分は笑っていられるのだと理解してもらうこと。

「そうしてくれ」

 男は彼女の肩に頭を埋めた。