シャツもジャケットも下着も剥ぎ取られて、里穂はシンゴの腕の中に囲い込まれていた。
 ……なぜか、裸の胸にネクタイだけが残されている。

 白い肌にダークカラーのネクタイ。
 少年のように凹凸のない体つき。
 けれど、肉はまろく、細い腰は女のもの。

 淡いルームランプに照らされ、里穂の体が作り出した陰影は少女のようにも少年のようにも見え、どこか倒錯的で艶かしく禁断的な美しさがあった。

 ごくりとシンゴの喉が鳴る。

「恥ずかしい」

 顔を背けて上気した顔を己の手で隠し、男を流し目で見つめる。
 その目つきがどれだけ男を狂わせるのか、知らない彼女だからこそ出来る無意識の媚態。

「女っぽくないでしょ」
「こんなに色っぽい体を見たことがないよ」

 シンゴは愛おしそうに口付けていく。
 二人は狂おしく甘い時間を過ごした。






「リホ、俺のことは慎吾って呼んでほしい」

 気持ちいいけだるさのなか、腕枕をしてくれていたシンゴから言われた。

「どういう漢字を書くの?」

 男はベッドサイドのメモパッドに自分の名前の漢字を書いてみせる。

「かっこいい」

 褒めると恋人は里穂の唇を啄んだ。

「リホ、連絡先を教えて」

 心地よい倦怠感の中、彼は乞うてきた。

「うん……」

 貪られた里穂はすでに微睡へと沈み始めている。

「起きてからでいいよ。……逃さないから」
「…………うん」