里穂の浮かべた笑みが寂しいものだったからだろう、慎吾が彼女を温めるように抱きしめた。

「【おかえりやす】に泊まった人達に、写真をもらえるよう呼びかけているんだ」

 里穂は目を瞠った。

 慎吾曰く。
 建物や敷地、里穂達家族が暮らした山小屋。里穂の祖父母や両親と撮った写真があれば送ってくれるようにと、色々なコミュニティツールで呼びかけているのだという。

 かつて住んでいた家には、山小屋時代からの沢山の写真が飾られていたが、燃えて灰になってしまった。

 逃げるように各地を転々としている間に、せめて里穂と両親で三人の写真を撮っておけばよかったのだが、家族にはそんな心の余裕すらなかった。

 父の太くて逞しい笑顔、母の見る者を元気にさせる笑顔は里穂の記憶の中にしか残っていない。
 里穂の瞳があっというまに潤んだ。

「……どうして慎吾はいつも私の欲しいものをくれるの」

「里穂のことが大好きだからに決まってるだろ」

 慎吾が彼女に微笑みかけてやり、すうと流れ落ちてきた涙を拭ってやる。